時計塔の鬼


並んで、手すりに腰掛ける。

手を繋ぐと、温もりと恋しさと愛しさが、一気にやって来て、私を震えさせる。

私の手からもシュウに、この気持ちがほんの少しでも伝わっているといいな、と思った。



二人で夕焼けを眺める。

シュウはいつだったか、『夕枝の夕は、綺麗な夕焼けの夕だ』と言っていた。

『枝は?』と問いかけると、『細かいところにまで気を配れますようにっていう親御さんの願いじゃないか?』と答えてくれた。

確かに、と思ってしまう。

名前は大切なものだから。

いつか、シュウが囚ではなく、ただのシュウになれたらいいと、思わずにはいられない。



くるっと隣りに顔を向けると、シュウもこちらに顔を向けていた。

近付き合った唇の微妙な距離がもどかしく、次の瞬間には、どちらからともなく互いのそれを重ねていた。


どうしようもないほどの恋情と愛情が、込み上げて来る。


キスを交わしながら、心の中でこっそりと呟いた。


ずっと、大好きなあなたと一緒に居たい、と。



――――――――――
第一部・了

次からは第二部・教師編へと続きます!

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