時計塔の鬼
体育館内のガヤガヤとした喧騒が耳に届く。
今日は入学式が執り行われる。
新任式や始業式は、午前中にすでに終わっている。
今日着任した親友を思い浮かべて、苦笑を漏らす。
今頃、長い式典にうんざりしているかもしれない。
『では、ただ今より……』
頭が半分ハゲた教頭の言葉がマイクを通して体育館中に響く。
それは、今まで散々繰り返されて来た光景の再現。
違うのは参列する人達の顔くらいだろう。
「ふぁぁ……」
あくびをしても全く気付かれず、咎められもしない。
私がいるのは教員席ではなく、体育館の二階の階段のすぐ側。
そこにパイプ椅子を置いて、冷たいシートにうんざりしながらも式の進行を見守る。
本当は新入生のクラスの副担任なのだけれど、人員不足からか、見張りに回されている。
ここに教員が配置されるのは生徒のサボりを無くすためらしい。
けど、教員のサボりはいいのかな?
と疑問は尽きない。
『これにて式を閉じます。新入生退場』
つらつらと取り留めのないことを考えていると、教頭の声がマイクから響いた。