時計塔の鬼
「二人とも、よかったらこの後飲みに行きませんか!?」
「嫌です」
私は即座にそう答えた。
何でわざわざ馬に蹴られにいかなきゃいけないんだろう。
ここは、恋する親友のために遠慮しなくてどうする!
けれど、シュン……としおれてしまった風の坂田君に、後少しで吹き出してしまいそうになった。
必死に堪えたけど!!
それに、私は今すぐにでもシュウに逢いたいから。
「あ、でも歩美は行ってくればいいんじゃない? 久しぶりに幼馴染みで水入らずで飲みに行ってきなよ!」
途端、歩美がぎょっとした顔で私を振り向き、小声で耳打ちしてきた。
「一体何言ってるのよ、夕枝!」
「後でまた相談乗ってあげるから!」
「そうじゃなくってぇ~」
うらめしそうな目で見上げられ、苦笑が零れる。
本当に、歩美は可愛い。
「行ってきなよ、ね?」
幼い子どもにいいきかせるように先ほどの言葉を繰り返す。