時計塔の鬼


歳は馬鹿にできない。


――ハァ、ハァ…


上り始めてすぐに息が上がってしまう。

でも、昇ることを……近付くことをやめるなんて、絶対にできない。

したくない。



ようやく傾いた日の光が、私を照らし出した。

初めは、髪。

次は、顔。

首、肩、胸、腰、そして、脚。


私の全てが、時計塔にたどり着いた。






「夕枝」



大好きな声。

その優しい声でもっと私を呼んで欲しいと思うことは、贅沢なこと?



「シュウ」


「仕事、お疲れ様」



そう言い、シュウはにっこり笑った。


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