時計塔の鬼
一歩、一歩、私とシュウは近付いて、笑い合う。
体が熱い。
シュウに近付く度、どんどんどんどん、熱くなる。
私は今赤いのだろう。
顔も体も。
夕陽のせいではなく、自身の熱によって。
クスクスとシュウが笑うのが、頭上で聞こえた。
睨み上げて抗議の声を出そうとけれど、それは叶わない。
顔に、ドクドクと振動が伝わってくる、温かい、その鼓動。
シュウの存在の証。
音と温もりで気づいた。
私がシュウの腕の中にいることに。
この腕の中にいると、安心できる。
シュウが鬼だなんてことを、忘れてしまいそうになる。
……否、実際に、忘れてしまう。
そして、その時は、忘れていることに気づこうとしないんだ。
何もかも、忘れてしまって、ただ、この腕の中にだけ存在していればいいや、なんてことまで考えてしまう。
そんなことは叶わないと、知っているからこそ余計に。