時計塔の鬼


「……大好き」



ポロッと口から気持ちが零れた。

それを聞いたシュウはクスクス笑いを抑えて、柔らかに笑んで私の顔を覗き込む。


「どうしたんだ? いつもはそんなこと言わないのに。やけに積極的じゃん?」


――ドクンッ
――ドクンッ



シュウの胸に、耳を当てていたからこそ、気付いた。

シュウ。今、鼓動が少し速まったよ?

すごくドキドキしていることに。

シュウだけでなく、私までもがドキドキと鼓動を速めている。



「ううん。ただ逢いたいなぁって思ってたから……だよ」


「そっか。でも、その気持ちなら、俺、負ける気しねぇよ?」



満足そうに頷いた後、シュウはにっかりと笑った。

けれども、すぐにその表情は曇る。



「俺はここに居るだけだ。夕枝が来ないと、夕枝に逢えない」



シュウが私の首に顔を埋めたので、また、体が強くシュウの胸に沈む。

そうして聞くシュウの声は拗ねているようにも、悲しんでいるようにも聞こえた。



“私だって辛いよ”

その意を込めて、シュウの背中に回した腕に力を込める。

一拍を置いて、シュウの腕の力も強まった。

温もりに包まれた沈黙の中、またシュウが口を開く。


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