時計塔の鬼
シュウは私に優しく笑んだ後、腕を取り、時計塔の手すりへと導いた。
もう、夕刻を幾ばくか過ぎた時間。
太陽はその日最後の光を、懸命に地上で暮らす人々に与える。
街が赤く染まる。
時計塔も染まる。
――私たちも、染まる。
私たちはいつもと同じように寄り添いながら手すりに腰掛ける。
私の右手はシュウの大きくて温かい左手に包まれて、春の夜風の到来からその身を守られている。
光が、山に吸い込まれて消えた。
夜のとばりはまだ降り切らないものの、次第に星たちが自らの存在を主張しだした。
それでも、私たちはしばらく無言で寄り添っていた。
繋がれた手は温かい。
側に在る体は互いの熱で、落陽の余韻にひたることを許す。