時計塔の鬼
7章 鐘は幾重にも音を重ね
a lost article.
「あれ……?」
お昼ご飯を食べ終えたところで予鈴が鳴ったので、ちょうど私は急いで次のクラスの授業の準備をしていた。
教科書や参考書、単語テストのためのプリントはちゃんと揃っているのだけれど……。
「ない……」
新しい作家についてのプリント資料をまとめようとホッチキスを探した。
けれど、机の上や中はもちろん、下まで探しても、一向に見つかる気配がなかった。
本鈴までの時間を意識すると冷や汗が背筋を伝う。
「すいません、坂田先生。私のホッチキス知りませんか? オレンジ色で、シールが張ってあるんですけど……」
「ああ、沖田先生の? ないんですか?」
「いつ間にかなくなってしまっていて……。あ、もう時間ですよね。すいません」
「いや……、見つかるといいですね。それまで俺の使う?」
「助かります」
すぐ隣りの席の坂田君から青のホッチキスを拝借し、急いでプリントを束ねた。
……高校時代を思い出す。
今とは真逆な貸し借り関係が、なんとなく懐かしい。
お礼を言って使い終わったホッチキスを返し、職員室を出た。
それにしても……どこにいったんだろう?