時計塔の鬼
自分で言うのもナニだけれど、物持ちは良い方だと思う。
今使ってるシャーペンだって高校生の時からの愛用品だし、折りたたみ傘も大学生の時の物だから、かなり年季が入ってるのに未だに壊れない。
いきなり使っていた物がなくなるのは、なんとも奇妙な感覚だな、と思う。
つらつら考えながら歩いていると、無機質なチャイムの音が聞こえた。
「やばっ……!」
すぐに焦り、今までの倍近い歩幅で歩き出した。
競歩のように。
今の私を見て、女じゃないと疑われても、仕方はないと思う。
今は、何より早く教室に着くことが大事だった。
「ねえ、夕枝ー!」
「何よ?」
放課後の職員室。
ハイテンションな歩美とは対照的に、私は機嫌も気分も悪かった。
結局五分程授業に遅れてしまった私は
生徒たちに授業をボイコットされた。
……わけではなく、教室に入った途端、散っ々、ブーイングの嵐に見舞われた。
曰く、『来ないから自習になって、好き勝手できると思ってたのによー』であるらしい。
それを言った生徒の手にはトランプが数枚、扇形に広げられていた。
その周りも右に同じ。
彼らの中心には捨てられたカードの山があったから、おそらくはババ抜きか大富豪でもやっていたんだろう。
それか、ダウト。