時計塔の鬼
私たちの高校にはとある噂がある。
もっとも、そんな噂は突拍子がなくて、誰も本気にはしない。
ある時、クラスの男子が肝試しに行くと話していたことがあった。
けれど、その後の騒ぎ方からして、結局は行ってないみたい。
彼らには意気地無しの言葉がお似合いだ。
けれど私にとってはそちらの方が都合がいい。
そう一人ごちて、放課後の誰もいなくなった教室を出た。
人の居なくなった廊下は、どこかのトンネルの中にいるようで、空虚な感じがした。