時計塔の鬼
一応教師として授業中のトランプは許可できない。
けれど、今回否があるのは明らかに私の方だった。
単純に、もっと早く来ていればよかったというだけ。
「じゃあ、遅くなっちゃったけど今から授業するから。それしまってね」
脅迫じみた満面の笑みと、ドスの利いた声で言うと生徒たちは渋々といった体で、従ってくれた。
後々面倒臭いことになりそうなので、それらについては私は見なかったことにした。
黙認も大切だ、という定義は高校生時代から変わらない。
「……と、いうわけなのよ」
放課後の職員室。
私は明日の分の単語テストのプリントを作成しながら、今日の出来事を歩美に語って聞かせていた。
歩美は自分もプリントを作成しつつも、うんうんと相槌を打ち、それを聞いてくれていた。
「夕枝も大変だったのねー……。そういえば、原因のホッチキスは見つかった?」
「ううん。あの後も探したんだけど、出て来てないよ」