時計塔の鬼


そう、ホッチキスは未だに出て来ていない。

使いやすかったことと、長年愛用していたものだから、どうなったのか。

しばらく気にせずにはいられなかった。

けれどそれも、歩美の言葉を聞くまでだった。



「えっと、私ね、最近慎ちゃんといい感じなの、かも……」


「ええーっ!?」



文字通り、私はのけ反った。

イスがギスギスと悲鳴をあげていたが、構いはしない。

けれど、叫んでから「やばい……」と思った。


なぜなら、ここは放課後の職員室。

部活に行かない先生たちが多くいて、おまけに皆さん仕事をしている。

そんな中で突然大声をあげたら、キッと睨まれるというものだ。

というか、思い切り睨まれた。



――コツッコツッ

偉ぶった足音が聞こえたかと思うと、“とある人”の香水の匂いがした。



「ちょっと沖田先生。いきなり叫ばないでくださいます? 私、驚き過ぎて心臓が止まるかと思いましたわ」



出た……。


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