時計塔の鬼
8章 鐘の音は危機を告ぐ
the rumor of the sister.
「まーったく、土方ババァの説教、ウザイったらないわ」
可愛い笑顔でさらっととんでもない暴言を吐く歩美。
機嫌が良いのを邪魔されたからって、それはちょっと……どうなんだろうか。
「歩美、また聞かれたら面倒になるんじゃない?」
「あ、そうね」
互いにキョロキョロと周りを見渡して、“セーフ!”と笑い合った。
ここは職員室へ続く廊下だけれど、近くに人の気配はない。
なぜなら、今は授業中だから。
歩美も私も授業が入っていないので、今は休憩みたいなものだった。
「あ、そういえば」
脈絡のない、歩美の突然の話題変換にも慣れた。
伊達に、大学時代から親友をやってきてはいない。
「何?」
「夏休みの学校見学会って保護者の同伴可よね?」
学校見学会は中学生を対象にして開かれる、学校説明会のようなもの。
学校の見栄のためなのか、前日には必要以上に掃除をさせられる。
私も確か、中学三年生の時に参加した。
私の場合、自宅から学校までの距離を確認しに行ったようなものだったのだけれど。