時計塔の鬼


ただ、あまりに果てしなく長く続くノロケを回避するためだけに聞いたのが悪かったのだろうか。

歩美の回答を聞いてしまった今となっては、もうすでに遅いことだけれど。



「あ、歩美、いいの? 坂田君は……?!」


恐る恐るの問いかけだった。



「ああ、慎ちゃん? いいのいいの! 夕枝の方が十億万倍は大事~!」



けれど、歩美はケラケラ笑うばかりだった。

このカップル……はたして、これでいいのだろうか。

心で歩美の哀れな彼氏に手をあわせた。

坂田君、尊敬するよ。

歩美にはあなたしかいない。






そうして、お弁当を食べ終え、しばらくコーヒーを飲んでくつろいでいた。

けれど、突然突然職員室の扉が開き、「沖田先生いらっしゃいますかー?」という声が室内に響いた。



「ほら夕枝。早く行って」



歩美は我関せずを貫く。

また溜め息をつきながら、面倒臭いなぁと思うけれど、それはおくびにも出さない。



「はいはーい」



そう答えながら入口へ向かうとそこにいたのは、葉平と……現国の教科書を手にした、合計二人の男子生徒。


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