時計塔の鬼
「そ、そんなことないって!」
職員室へと長い廊下を歩きながら、少々大袈裟にケラケラと笑う。
動揺を悟られないように、演技をした。
「本当にー!? 隠し事はダメだからね!」
「はいはい」
「もー、夕枝ったらいつもそんな感じなんだからぁー……」
そうして、ジっと目を覗き込まれた。
かと思うと、「何かあったら相談乗るからね?」と、にっこり、けれども心配を滲ませた声音で歩美はそう言った。
……敵わないなぁ。
心の中で、苦笑を漏らした。
歩美には、いつか。
いつか、シュウのことを話せたらいいのに。
そう願っている自分に、また苦笑を漏らして、私は三歩半ほど先に進んでしまっていた歩美を追いかけた。