時計塔の鬼
cooperators.
「でねー、また土方先生が~……」
「それは歩美が悪いだろ?」
「んもー、慎ちゃんまでそんなこと言うーっ!」
「ははっ。事実だろ?」
「そーだけどぉー……」
今、私の目の前には、バカップルが一組。
――ガラガラ…
『らっしゃいませー!』
店の扉が開いては閉じを繰り返し、その度にカウンターの奥から威勢のいいおやっさんの声が店内に響く。
学校近くの居酒屋、コアラ。
歩美、坂田君、私の三人が、今酒を飲みかわしている場所だ。
このメンバーで飲む時はたいていここを使う。
理由は簡単で、学校に近くて、私と歩美の家に近いから。
それだけの理由からだけど、私自身、ここの店は意外と気に入ってる。
雰囲気もいいし、おやっさんや奥さんは気が利いて、息子さんの料理は絶品。
こんな素敵な居酒屋が近場にあるってことは、きっと、すごく運がいいのだろう。
誰の日ごろの行いのおかげかは、言い出したら喧嘩になるだろうから、心の中にそっと秘めておくことにする。
「で? なぁ~にがあったわけぇ?」