時計塔の鬼
「なんで、お前らがここにいるんだ……?」
半ば呆然とした声は坂田君のもの。
そうなってしまうのも、当然だろう。
自分の受け持ちの生徒がいきなり居酒屋に現れたのだから。
「そりゃー、僕らの大事な沖田センセの一大事ですから? な、葉平」
「そうそう。俺の大事な従兄弟の危機ですから?」
二人を見て、歩美はケラケラ笑い出した。
「あっはは! あんたたちいいわよー! 夕枝を困らせるクソ野郎をとっつかまえるわよぉー!!」
「おぉー!」
「さっすがは井上センセー!」
歩美はコップに残っていたビールを一気に飲み干した。
そして、それに続いてノリノリで拳を振り上げる男子高校生が二人。
斜め前を見れば、盛り上がってる中心人物の彼氏のビールジョッキも空になっていた。
その人物はタッグを組んだ三人を見て、溜め息をつき、コソッと言った。
「沖田さん、ガンバ」
「……アリガトウ」
かくして、協力者が現れた。