時計塔の鬼
10章 終結は鐘の音の下で
secret night only for women.
――ガチャ…
「お邪魔しまーす」
「汚くてごめんねー!」
パンプスやらスニーカーやら何やらが下駄箱に乱雑に入れられていて、衣服類もところどころに散らかっている。
普段、家に人を呼んだりしないから油断してたとはいえ、あまりにヒドい。
というか、汚い。
「あー大丈夫大丈夫。慎ちゃんトコよかはるかにマシだから」
……慰められてるのはわかるけど、引き合いに出される坂田君の部屋って一体何なんだろう。
あっけらかんとして答えた歩美を見て、苦笑が漏れる。
「あ、晩御飯ってもう食べた?」
「え? まだだけど?」
「よぉーっし! 私が作ってあげる! 夕枝はそこで座っといてねー!」
これって、普通、彼氏の家に泊まりに来た彼女のセリフじゃないだろうか……。
歩美相手だと、悪い気はしないけれど。
「材料何あるかなぁ~」
語尾にハートか音符のマークがつきそうなくらい、歩美はご機嫌だ。
……任せておこう。
信頼する親友に晩御飯の支度を任せ、私は部屋の掃除にとりかかった。