時計塔の鬼
きっと、私は心のどこかで思っていたのだろう。
ずっと隠し通していくのは無理だ、と。
協力者や、戦友とまではいかなくても、理解者がほしかったのだ、と。
「鬼なの」
「へ?」
「私が好きなのは、鬼なのよ……」
しばらくの間、歩美はフリーズしていたようだった。
おそらくは、それが当然、だろう。
いきなり親友から聞かされた言葉が“鬼が好き”なのだから。
驚くなと言う方が、間違っているのかもしれない。
「驚いた?」
言葉を捜してか、少し黙り込んだ後、歩美はボソリと言葉を落とした。
「それって、趣味とか空想とかじゃなくて、なのよね?」
「もちろん、現実だけど?」
「鬼って、存在してるの?」
「してる。自由には動けないらしいけれど」