時計塔の鬼
また、しばらく黙り込む。
沈黙の中、チッチッ……と時を刻む時計の音が室内に響く。
衣擦れの音がして、歩美が動いたのを知った。
そして、キシッ……とベッドが軋む音がした。
見ると、布団からベッドの上へと、歩美は移って来ていた。
「好きなの?」
「好き」
私が持つのは、即答だけ。
「なら、応援する」
そしてまた、歩美の返事も早かった。
応援する……応援する……応援する!?
「……え?」
「だから、応援するって言ってるのっ! 夕枝が自分の恋バナしたのなんて初めてだもん」
拗ねたように、けれどすでに決めたこととして言う歩美に、こちらの方が戸惑ってしまった。
「え? だって、鬼よ? 鬼」
「でも、夕枝の好きな人……じゃなかったわよね、鬼なんでしょう?」
「え、そ、そうだけど」
「なら、親友の恋を応援するのは当然じゃない!!」
やはり、あっけらかんとした態度の歩美にホロリと涙が零れそうになった。