時計塔の鬼
「ま、それだけ大きなあくびができるなら大丈夫っぽいね」
「だな」
「ってことは歩美も寝不足か……」
それぞれ、葉平、田中君、坂田君の順番だった。
昨夜の心配は、あくびがどこかへすっ飛ばしてしまったらしい。
ホッとする反面、切り替えの早さに複雑な気持ちになった。
女として、はたしてこれでいいのだろうか……。
けど、それを口にする間もなくガヤガヤし出した空気に急かされたかのように、みんなは散っていった。
その後の授業は、とにかく睡魔がすさまじく、前半だけ授業をして、後半はプリント学習にするといったように、手を抜いてしまった。
申し訳ない、とは思いつつも、これ以上はさすがに限界だった。
一年三組での授業後。
「先生ー」
「何?」
「どうかしたの?」
教室を出ようとしたら、どちらかというとギャル系に入る女の子たち四人に話しかけられた。
……とにかく、驚いた。
そんなに顔に出てしまっているんだろうか。
歩美の化粧マジックをもってしても、寝不足は隠しきれなかったんだろうか。