時計塔の鬼
放課後。
私はいつも時計塔に昇る。
時計塔は、いかにもって雰囲気がただよっていて、校舎とは二階の連絡通路でつながっている。
厳かな空気が満ちていて、普段の喧騒とはかけ離れた別世界にいるような感覚になる。
塔の一番上の空間。
そこは四方の隅がコンクリートの柱で、腰くらいまでしか壁がない。
手すりにしかならない所からは、三階建ての校舎の屋上がよく見える。
コンクリートの手すりから上半身を背り出して見る夕焼けは、格別だ。
百万ドルの夕焼けって言ってもいい。
街の屋根が
通学路に植えられている樹々が
下校中の生徒たちが
そして、空が
赤く染まっていく。
それはまるで、世界がぽっかりと切り取られていく瞬間のように感じられた。
そこは私の特等席。
この学校に入学してもう半年経つけれど、まだ誰ともここであったことはない。
だからこの特等席は私だけのものなんだって。
そう、思ってた。