時計塔の鬼


彼女が去った後。

考えてしまうのは、最近は夕枝のことばかりだ。




話していると楽しくて、いつの間にか笑ってしまう俺がいる。


夕枝の反応が面白いのがいけないのか。

それとも、俺が変わってしまったのか。




長い時間を生きて来て、その時間のほとんどは孤独を感じるものだった。


気まぐれに人間と関わろうとする度に、人間の命の速さを思い知る。


誰かと出会うのは、誰かとの別れを経験するのと同じことだ。




だが……。



夕枝と会うことを楽しみにしてる俺も、確かにここにいる。


夕枝と話していると、心臓が壊れてしまうのではないだろうかと思ってしまう。


いつもいつも胸の鼓動が、俺を急き立てる。


この感情は、何なのか。



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