時計塔の鬼
ふと気がつけば、また俺は時空の流れの中に居た。
渦巻くように常に変化して見える幾何学模様を背景にして、示される道は、二つ。
さらなる過去か、はたまた現代か。
しばし、考えた。
俺はどちらに行くべきなのか、と。
現代へと戻り、おそらくはひどく心配しているであろう夕枝たちを安心させてやることが、やはり正しいのだろうが……。
魂がひかれるのは、過去だ。
知れ、知れ、と呼びかけられる。
俺の過去は記憶を取り戻したので、このまま戻ってもなんら問題はないのだけれども……。
「行く、か」
俺は未来へ戻るのではなく、さらなる過去へと遡ることを選んだ。
きっと、俺は知らなきゃいけない。
この時計塔の過去を。
それがおそらくは、俺がこの時計塔の鬼になった理由にも繋がるのだろう。