時計塔の鬼


「本当によかったよ」


「……ゲン?」


「何かい? 半人前のボーヤ」


「そのボーヤってのはやめろ」



ムッとして言い返したのに、それに返されたのは、ゲンのニヤリと効果音の付きそうな笑顔と「やーだね」という拒否だった。

どこからか、ゲンは紫色の扇を取り出し、広げたそれで口許を隠した。



「私にとってはね、シュウは子どものようなものなんだよ。意味、わかるね?」


「俺が鬼としては不完全な未熟者だからか?」



人間の魂が鬼になった。

そんな鬼が俺だ。

だが、ゲンは生まれながらの鬼なのだろう。

俺とは存在感もチカラも、ほとんどが違う。



「それもある。けれど、それだけではないのだよ」


「シュウ、君は過去を知りたい、と言ったね?」


「……ああ」


「君はわざわざ、未来から来た。それだけで、君にはもう知る権利がある」



『おいで』と、ゲンは手を差し伸べてきた。

取るのを躊躇ったが、彼の強い瞳に促され、その手を取る。

すると――。


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