時計塔の鬼
彼女がどこへ赴任されても、時計塔の外でも、夕枝に会えるように。
彼女が辛い時には、傍で支えることのできるように。
寂しい時には、抱きしめてやれるように。
だから、だから――。
俺は“人間”になりたい。
そう強く思った時、目の前に強い光の筋が差し込められた。
眩しくて目を細める。
だが、その光の先を目指して、流れはどんどん速くなっていく。
それはついに、目を開けてはいられないほどの強い光になり、俺はそっと目を閉じた。
おそらく、これが俺が“鬼”であった最期の瞬間だった――。