時計塔の鬼
「一体、どうしたの?」
「いや……ちょっと確かめたいことがあって、な」
「確かめたいこと……?」
私とシュウの声が、時計塔の広くはない階段に響く。
シュウの言う確かめたいこと、とは何なのだろう……。
灰色の壁が四方を囲む中、ゆっくりと階段を下る、コツッコツッという音が反響して妙に大きく耳の残った。
「あー、やっと外!」
「みかん、危ないねんから飛び降りしないっ!」
「そういうお姉ちゃんも飛び降りないのっ!」
「……どっちもどっちよね」
「だな」
まるで漫才のような、三人の会話には思わず苦笑を誘われる。
それはシュウも同じであるようで、口元を呆れたように歪ませていた。
シュウと共有できる時間と感情があることが、堪らなく嬉しい。
先ほど、もう目覚めないんじゃないか、という恐ろしい考えを持ってしまったから、余計にそう思う。
こんな幸せが、いつまでも続けばいいのに。