時計塔の鬼


「…………」




時計塔の踊り場の手すりに腰掛けて、こちらを眺めているシュウの姿。




本当に、自分の目を疑った。


目をこすってもう一度開ける。


けれども、その光景は、変わらない。



やはり、居た。




見ているこっちが照れて来るほどの、満面の笑みを浮かべ、足を宙ぶらりんにさせている。




手の平から顔を浮かせる。



――ドクンッ
――ドクンッ



心臓が早鐘を打ち出すのがわかった。


肩から力が抜け、前髪が左の手の指の間に絡まる。




何なのよ、アイツ。




なぜだか恥ずかしい。

けれど、なんとなく嬉しい。




額にかかる前髪を、手櫛で軽く撫で付けた。


< 37 / 397 >

この作品をシェア

pagetop