時計塔の鬼
「…………」
時計塔の踊り場の手すりに腰掛けて、こちらを眺めているシュウの姿。
本当に、自分の目を疑った。
目をこすってもう一度開ける。
けれども、その光景は、変わらない。
やはり、居た。
見ているこっちが照れて来るほどの、満面の笑みを浮かべ、足を宙ぶらりんにさせている。
手の平から顔を浮かせる。
――ドクンッ
――ドクンッ
心臓が早鐘を打ち出すのがわかった。
肩から力が抜け、前髪が左の手の指の間に絡まる。
何なのよ、アイツ。
なぜだか恥ずかしい。
けれど、なんとなく嬉しい。
額にかかる前髪を、手櫛で軽く撫で付けた。