時計塔の鬼
from that.
朝。
一年前までは本当に苦手だった料理も洗濯も掃除もこなし、二人分のお弁当も作り終えて、リビングで淹れたてのコーヒーを飲む。
コーヒーの程よい苦みが、時折襲ってくる眠気を撃退してくれるから、私たちは毎朝朝食後には一杯のコーヒーと決めていた。
「夕枝」
「なぁに?」
「今日、帰るのはいつになる?」
「んーと、七時前には帰れるようにするわ」
「わかった。俺は八時過ぎになるだろうけど」
「ちゃんと夕飯作っておいてあげるからね」
「楽しみにしてる」
まるで、新婚夫婦のような会話。
けれど、あながちそれも間違いとはいえない。
今年の夏休み、私と彼は、結婚する。
あと一ヶ月ほど。
長いような、短いような、どう言えばいいのかと少し困ってしまう長さだ。
少し、気恥しい気持ちもするけれど、それはきっと、とてもとても幸せだってことだから。
私は笑って、現在同棲中の彼を毎朝会社へと送り出し、自分も学校へと向かうのだ。