時計塔の鬼
一年前の、あの日。
私はシュウが本当に居るということを落ち着いて理解してから、彼を質問攻めにした。
「なんで消えてしまっていたの……っ?!」
「うん、まあいろいろと事情ってモンがさ」
「その事情って何?」
「うっ、今言わねぇとダメか?」
そろ~りと視線をあさっての方向へと向けたシュウに、思わず苦笑が漏れた。
彼は、変わっていない。
そのことが、無性に嬉しかった。
けれど、私には追及を緩める気なんてない。
「今言わなきゃいつ言うの?」
「今日の夕枝の勤務が終わってから、夕枝の家の近くの喫茶店とかで?」
「…………」
しまった。
私は、シュウのこういう仕草に弱いんだった。
今も昔も変わらない、シュウの少し不安な時の表情には、逆らえない。
イロイロと訊きたいこと、知りたいことは山ほどあるのだけれど。
シュウが私の家の近くの喫茶店を指定した、ということは、シュウはもう外の世界に出れるってことなんだろう。
そうでなくては、今のシュウの服装の理由が思いつかない。
「……わかった、待っててね」