時計塔の鬼
思いもかけない時に、思いがけない人に会えると嬉しい。
おそらくは、そんな感情。
心はシュウを見れたことに、そして、シュウが笑いかけてくれたことに喜んでしまっている。
この喜びも、全てがそれなのだろうか?
少し違和感。
こんな乙女のような思考が生まれた自分に対して。
私はどうしてしまったんだろう。
――ドクンッ
――ドクンッ
自問自答が続く間も、心臓の動悸は収まらない。
チラリと横目で塔を見ると、シュウの姿は、まだ在った。
笑っている。
再び視線を机へと戻した。
おかげで、誰にも知られることはなかった。
俯くことになった顔に、笑みが浮かんでいたことを。
それは、抑え切れないほどの幸せを滲ませた笑みだった。