時計塔の鬼
「俺も部活さえなかったら行きたいのによー」
「私は坂田君じゃなくて、夕枝に聞いてるんだもん」
「ちぇっ」
「部活行かないの? もうすぐ始まるんじゃなーい?」
「ほーい。じゃ、また明日な!」
そうして、坂田君は空に近そうな鞄を持って、周りに愛想を振り撒きながら教室を出て行った。
それを見送って、柚子は再び私の方へと振り返った。
「夕枝はカラオケ行ける? 久し振りだし行けたら行こうよぉ!」
「最近テスト勉強ばかりだったしね」
「そうそう! で、どうするのっ?」
ハイテンションを少しも崩さずに、柚子は尋ねた。
行きたくないわけではないけれど……。
柚子への少しの罪悪感が脳裏を掠める。
「柚子、ごめんね? 私ちょっと用事あるから、パスするね」
結局の所、私の答えは決まっていたんだ。