時計塔の鬼
最近、塔に昇るのが寒くなってきた。
一歩、踏み出すごとに足の指先から寒さがジンジンと伝わって来るようだ。
そして、指先や耳たぶなどはすでにこの寒さの為に、感覚を失いかけている。
晩秋から初冬にかけての時間はとても短い。
秋の気配は本当に、あっという間に過ぎ去って行ってしまう。
このまま行けば、二学期が終わるまでには初雪が降るだろう。
毎日時計塔から眺めている街並みが、雪によって真っ白に染め上げられる様を想像してみる。
白の世界。
静寂の世界。
それはきっと、ひどく神秘的で、美しいのだろう。
それはそれで楽しみだ。
小さな楽しみが出来たことに、些細なことではあるけれど、ワクワクしてしまう。
そんな自分は結構好きかもしれない。