時計塔の鬼
そんなある日の。
お昼ご飯を食べた後の、体育の授業。
「今日はマラソンだ! キリキリ走れ!」
「え~!!」
「先生嫌い!!」
「走りたくない~!!」
季節柄、なぜかマラソン。
多大なブーイングにもめげず、熱血系体育教師は、準備体操を始めさせた。
日中と言えど、冬の風はやはり冷たく、頬の皮膚がピンッと張っている。
「もうやっぱりやだ! あ~ん、夕枝~!!」
「こんなカリキュラムなんて聞いてなかったしね……」
「ダルいの嫌~。ザビエルの馬鹿ーっ」
ザビエルというのは、体育教師のあだ名。
日本史の教科書に出て来る、フランシスコ=ザビエルに髪型が似ているからだ。
つまりは、バーコード禿げに近い状態。
誰が言い始めたのかは知らないけれど。
「ほら、いつまでも愚痴っていても仕方ないって」
柚子の肩を叩いて、励ました。