時計塔の鬼
近隣では制服目当ての入学者がいるらしい。
そんな噂話が立つ、この学校の制服を彼は自然に着こなしている。
薄い青色のシャツに、紺に幾筋かラインの入ったネクタイを緩めて。
そして、同じく紺の襟の付いているブレザーとズボン。
とにかく、目の前の彼はものすごい美形だった。
先輩なのかな……。
でもこれほどの美形なら、一学期の始め辺りにミーハーなクラスの女子たちが騒ぎ立てているはず。
そう考えて自らの仮説を否定し、また考えを巡らしてゆく。
では、
目の前に立つこの人は誰なんだろう、と。