時計塔の鬼
『何? 急にどうしたの?』
訊いても返って来るのは、いつも気の入っていない返事ばかり。
『何でもねぇし』
ほら。
秘密主義者、というわけではないだろうに、シュウは自分のことをあまり話さない。
訊けば答えてくれるのかどうかは、定かではないから私も訊いていない。
私たちは、不思議なバランスを保っている。
『ふぅん。そ』
『なんか、嫌な言い方』
『元はといえば、シュウがでしょ』
『違う』
『違わない』
『……あ、っそ』
どこか、拗ねたような物言いに、少し苦笑が漏れた。
所々で、シュウは子どものような一面を垣間見せるのだ。
そして、私は、それが嫌いではない。