時計塔の鬼
ふと、頭にある人間の声が、甦る。
“あんた、名前は?”
“もぅ、黙ってたらわからへんやろ?”
“あーもうっ! あんたが言わへんなら、うちが勝手に名付けたるわ!!”
“そうやなぁ……シュウなんて、どうやろ?”
“だって、あんたはこの塔の囚われ人やん。鬼やけど”
“シュウ”と初めて俺に名前をくれたあの人間は
……もうこの世にはいないけれど。
彼女の残した言葉は、今も俺をこの時計塔に縛り付ける、二本目の鎖になっている。