時計塔の鬼



だけど……



夕枝の、むくれた顔やすねた顔。

怒った顔と、そして笑った顔が、瞼に焼き付いてしまっていて、離れようとしない。





彼女と出会うまでの時。


俺は、どうやって時を過ごして来た……?



思い出そうとしても、それは叶わない。


忘れてしまったんじゃない。



拒絶、するんだ。



俺が夕枝に会うまで、どうやって過ごしてきたのかを思い出すことを。




体が、拒否している。



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