時計塔の鬼



なぜか、今日に限って時計の進みが遅が遅く感じられる。



夕枝と共にいる時は、時間なんか止まってしまえと思うのに。


あの遅い分針は、本当に秒針なのか……?





溜息をつき、太陽が放つ紅い光を浴びる。



隣に、夕枝の姿は、ない。






胸がぽっかりと空洞を作って、木枯らしがそこを甲高い悲鳴を上げて吹きぬける。




体が穴だらけだ。


この穴を埋めていたのは……?





再び、塔に溜息を落とす。






夕枝。



会いたい。



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