時計塔の鬼
「っ……居たっ!」
見えた。
見つけた。
この数日間、探しても探しても見つけられなかった姿。
求めていた姿を。
肩までの真っ直ぐだった黒髪は、少し伸びたかのように感じる。
頬の肉付きが、少し落ちている。
顎の線は、あんなにも細かったか?
夕枝。
とにかく、早く、早く……
「早く来いよ……っ」
安堵の溜息とともに、その言葉が心の底からするりと抜け出てきた。
そして同時に、はっとする。
俺は何を言った?
なぜ……夕枝を求めてるんだ?
俺は、鬼だろう?
なんで、人間の女なんかを。
ここ最近、頭をもたげる謎にしばらく呆然とする。