時計塔の鬼
……何なんだ、この気持ちは。
イライラする。
胸がムカムカする。
吐き気ではないが。
ふと突然、俺の頭をある言葉がかすめた。
“嫉妬”
言葉としての知識なら、ある。
意味は解る。
けど……
この気持ちが嫉妬なのかどうかがわからない。
第一、それは独占欲かもしれないだろう?
“嫉妬”
“独占欲”
それらは二つとも、俺には関係のないはずの言葉だ。
それに。
相手は、夕枝なのか?
たかが、無力な人間の小娘だぞ?
わからねぇ。
ただ、俺の胸に暗雲が広がっていったのは、確かだった。