時計塔の鬼

引っ張られてよろけてしまったせいで、額が彼の胸板に当たっている。




いくら綺麗でも、やっぱり男なだけある。


布を隔てていても、ちゃんと、しなやかな筋肉の存在を感じることができる。




そして


――ドクンッ
――ドクンッ


という鼓動も、確かに聞こえる。




抱き締められたに近い状況で、耳に唇を寄せられる。





今度は、はっきりと空気が揺れて、言葉が伝わる。






「俺は鬼なんだよ」



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