時計塔の鬼
聞いた瞬間。
思わず、自分の耳を疑ってしまった。
頭の中に、相手の正気を伺うような言葉が浮かんだ。
けれど、それらを口に出すことはしなかった。
否、きっとできなかったんだ。
彼の持つ雰囲気に、私は確かに圧倒され、飲み込まれていたのだから。
そして、静かにこちらを見つめる瞳は真剣そのものだったから。
しばらくして、彼はニヤリとその唇の端を吊り上げて笑った。
しばしの沈黙が破られる。
「どう? 驚いた? ……一年三組、沖田夕枝サン」