時計塔の鬼
遠くで、部活を始めだした生徒たちの声が聞こえる。
野球部のランニングの低い掛け声。
合唱部の発声練習。
吹奏楽部の音出しの伸びやかな音。
頬に当たる風は、やはり強く、痛い。
ああ、現実なんだ。
そう、悟る。
これは、現実。
つまり……
シュウも、私を?
もし、これが本当なら。
もし、これが現実なら。
これ以上に嬉しいことはないだろう。
そう他人事のように考えて、今、わかったん。
今は、現実そのものだ。