恋に恋する五秒前
リストバンドで傷を被って記者やみんなにばれないようにした。
昨日の事を知ってるのはカナメとヒロヤスだけ…。
誰もみんなにばらされないはず。
そう、思った。
「そろそろ、練習やめろ~。個人個人控え室に戻れ~!!」監督がみんなに呼び掛けた。
「まだ、試合まで時間ありますよ…!!もうちょっと…もうちょっとだけ…!!お願い!!」同じチームの坂口ケンタが言った。
「ケンタ、お前は昨日あれだけ練習しただろ?!もう十分だって…。それに時間はまだあるけど、観戦者が入ってくるんだぞ…!!」 監督は頭をポリポリして困ったかのようにも思えた。
坂口ケンタは昨日夜にトレーニングをしていたらしい。
「入場時間いつですか?」
「9時…」
「9時!?試合開始10時っすよ…」
「決まってる事なんだ…。な?!戻れ…みんなも控え室で待機してろ!!」
「マジかよ…」坂口ケンタは文句がありそうな顔をしていたが、マサヨシ…いやマヨと笑いながら戻っていった。
私達もラケットを閉まって、戻る事にした。
廊下を歩いていると後ろから騒がしい声がした。