にゃんことわんこ
相変わらず女は表情を崩さず笑顔で俺を見ている。
その視線は見張っているようで隙がない。
ここから逃げ出せる空気じゃないよな。
「何で俺の名前知ってんスか」
制服から高等部の先輩ということは分かっているから一応敬語で質問する。
「えへへー。それはこれっ」
女は目の前に2冊の本を見せた。
気づかなかったがさっきから持っていたらしい。
ってかこの本……
俺が昼に持ってた本じゃんか。
借りようと思った本と返そうと思った本。
そうか。
返す本のバーコード押せばクラスと名前が分かるんだった。
やっちまった。