にゃんことわんこ
「あの……先輩は食べないんですか?」
「藤くんのためのケーキだもん」
自分の誕生日になんで俺のためのケーキ作ってんだよ。
先輩はまだかまだかと一時も視線を離さずケーキを食べるのを待っている。
嬉しそうな顔をして俺が食べて喜ぶのを待ってるようだ。
フォークで少しすくう。
ここで食わないと失礼だよな。
食べずに『いらねえ』とか傷つくパターンだよな。
唾を飲み込む。
よしっ。勇気を出せ。
こんなの長い人生のほんの一瞬だ。
いくぞっ。
意を決して勢いよく口元へ運んだ。
が、
鼻をかすめた甘い納豆の香りに手が止まった。
……無理です。