にゃんことわんこ
逃げるように先輩が走り去っていく。
ってか早っ。
予想以上にすぐに消えた後ろ姿に言葉をかける余裕もなかった。
なんだ?あの反応。
いつもならどんなに嫌がっても強引に送らせるくせに。
それにあの顔。
照れたのは分かるけどなんであんな弱々しく笑ったんだ?
やけにその表情が胸に引っかかった。
いつもなら手間が省けて嬉しいはずなのに。
先輩があんな顔するから喜んでもいられない。
めんどくせえ。
こんな小さいこと気にするなんて。
「……」
ま、とりあえず帰るか。
薄暗くなった空に見えた1つの星を一度見上げて、俺は来た道を歩き出した。