恋愛クリニック部【修正中】
「ちょっと待っていなさい」
訳も分からず、ただされるがままの車椅子の彼女を玄関先で待たせ、俺は財布や車の鍵を持つためにリビングへと足を踏み入れた。
テーブルの上に置かれている車の鍵を急いで手に取り、壁にかけてある家族写真を見た。
そこには、今よりも肉付きがよく、大口を開けて笑う妻の姿と今より少し若返った自分の姿…そして2人の間に3歳になる小さな息子が前歯のない歯でニコヤカに笑っている姿が写されていた。
俺は息子の顔を手で触れ
「行ってきます」
と言って、玄関で待つ彼女の元へと急いだ。
車に乗った俺に彼女は他人行儀に訊ねて来る。
「どこへ行くんですか?」
痩せてしまった彼女の頬…。
昔のように笑わなくなった口元。
手入れのされていない髪…。
そんな彼女にしたのは、紛れもない俺だった。
「俺たちの思い出の場所だ」
俺が前を見ながら答えると、彼女は、黙ってしまった。
きっと言っている意味がわからないのだろう。
だって彼女の記憶は……。
俺は唇を噛み締めながら車を急いで走らせた。