キミノタメノアイノウタ
「母さんは何も聞かないんだね…」
進路を変えた時、父さんは満足そうに頷いた。
最初からそうさせるつもりだったのだろう。
それを見て、私は父さんには何も言うまいと誓った。
対照的に母さんは何も聞かなかった。
奏芽ですら、私の行動を不審に思ってあれこれ聞いてきたというのに。
父さんはともかく、母さんは私が志望大を変えたことを変に思わないのだろうか。
母さんはゆっくりと口を開いた。
「瑠菜だって何も言わないじゃない」
その言葉にハッとした。
(ああ、そうか…)
母さんは私が話し出すのを待っていてくれていたのだ。
ぎゅっと胸の奥が痛くなる。